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――5叉路の信号が、せわしなく色をかえていく。
その中に僕の好きな色はない。
僕の好きな色はオレンジ。
東京の空気は排気ガスで汚れてるって思ってたけど、マンションのベランダに居座っているオレンジは毎年きれいな実を付けている。
そしてなぜか甘い。
向こうから持ってきたときは、すっぱいだけだった気がするんだけど。
信号が青になって、周囲の老若男女が一斉に歩き出す。
季節によって顔を変えているビルのコンクリートは、冬将軍と供託して辺りをより一層冷え冷えとさせていた。
夏になったら、夏船長とヒートアイランドに乗り上げるつもりなんだろ、と今のうちから釘を刺しておく。
僕は白黒が続く線路の上を歩きながら、白い息を長く細くたなびかせ、すっかり遠くなってしまったあの頃に思いを馳せた。――
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