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私はみんなにチョコを配る。もちろん、佐伯さんにもだ。 私は、ウサギのチョコレートを鞄の奥底にしまっていた。 あれ、義理チョコなのに、なぜか、渡せない…。 ここの所長にも同じ袋に入れた同じチョコレートになってしまって、よく考えたら、佐伯さんにだけちょっとリッチなチョコレート。 だから、本命なんじゃないかって疑われそうで怖かったから、みんなと同じチョコレートを渡してしまった。 とはいえせっかく買ったのだから、このウサギのチョコレートはちゃんと渡すつもりだ。 ただ、二人っきりになるときはもちろんあるのだけど、仕事中だし、時間を取らせるわけにはいかなくて。 時間だけが過ぎていく…。 「矢川さん、」 いきなり呼ばれて、私はびっくりしてそちらを見てから返事をした。 「はい」 「ごめん、驚かせたね。今からちょっと外回りに行ってくるので、金森君が戻ってきたらこれ渡しといて」 「わかりました」 私はそれを受け取る。受け取るだけなのに、私の心臓は以上に早く鼓動を打っている気がする。 佐伯さんの、目が私をとらえていて、私は思わず資料に目を落とした。 外回りってことは、今日はもうこれで会えないのかな。 「あ、チョコレートありがとう」 「い、いえ」 彼の中では、もはや完結したであろう、チョコレートのやりとり。けれど、私の中ではまだ完結していない。 .
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