交際

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「心結、帰ろうぜ」 ある日の放課後、拓哉がいつものように心結を誘いに教室にやって来た。 今ではそんな二人を見ても、冷やかす生徒は一人もいない。 本当に最初だけなんだね、注目を浴びるのって。 心結はカバンを持ちながらそんなことを思っていた。 もちろん依理子たちにも同じことが言えた。 心結たちが付き合ってると知った最初の3日間くらいは、拓哉の話で持ちきりだった。 なのに今では拓哉の『た』の字も出てこない。 人の噂なんて、あっという間に消えちゃうんだ。 現実を目の当たりにして、心結はそう悟った。 * * * * 校門を出るといつものように心結の手は拓哉の手と繋がっていた。 もう冬だというのに、心結の左手はまだ寒さを知らない。 そんな心結は、拓哉と手を繋ぐことにあまり違和感を感じなくなっていた。 ホント慣れって恐ろしいよ。 心結はアスファルトを見つめながら、ぽつりと呟いた。
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