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今もそうだった。
先輩しか眼中にない心結は、拓哉がいることに気付きもしない。
それどころか───
「キャッ素敵!!」
と、声を弾ませながらはしゃいでいた。
そのうち携帯を取り出すと写真を撮り始めた心結。
そんな無邪気な心結の姿が拓哉の視界に入った途端、拓哉は恐ろしいほどに目尻を吊り上げ、心結を睨みつけた。
なんだよあいつ・・・・。
まだ大崎先輩を・・・・。
拓哉の心の中に、どす黒い感情が広がり始めた。
一方心結はそんな拓哉に気付くこともなく、うれしそうに大崎先輩を目で追っていた。
その様子に、拓哉は掛ける言葉さえ失っていた。
くそっ、なんでまだ・・・・。
拓哉は携帯電話をぎゅっと握りしめると、裏庭からすごい勢いで飛び出していった。
暗く湿った裏庭を出た途端、拓哉の顔に太陽の陽射しが降り注いだ。
拓哉はやりきれない思いで地面を踏みしめ、両手で日差しを遮った。
拓哉の心がざわざわと騒ぎだし、どす黒い感情は、どんどん増え続けるばかり。
ここから早く逃げ出したい!
そんな思いに駆られた拓哉は、一気に階段を駆け上がって行った。
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