真実 *

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「けどおまえ、スゲー顔してるぞ!」 心配そうに拓哉の顔を覗きこみながら、恵介も心穏やかではいられない。 それなのに拓哉本人は、 「別に何でもねぇーって言ってるだろ!」 と、声を荒げるばかり。 これ以上言っても無駄だと言うことは、経験上すでに熟知しているの京一郎たち。 拓哉の顔色をうかがいながら、本題に入ることにした。 「それじゃあ頼むわ」 「ああ?」 しかし拓哉には何のことかさっぱり理解できず、眉をひそめながら京一郎たちを見ていた。 「おいおい忘れたのか?昼休みに俺の新曲聞いてくれる約束だっただろ」 京一郎は少し拗ねたように言った。 実は音楽好きな京一郎と恵介は、『ダイス』と言うバンド仲間でもあった。 京一郎がギター担当で、恵介はベース、ボーカルとドラムは別の高校の生徒が担当していた。 もちろん拓哉も誘ったのだが、音楽に興味が無いと言って断られていた。 けど二人はまだ諦め切れなくて、今日みたいに拓哉を誘っては、音楽の世界に引きずり込もうと企んでいたのだった。 「あーーそうだったな!」 約束をすっかり忘れていた拓哉は、すこし照れたように頭を掻いた。 そんな拓哉の態度にイラついた京一郎。 「ちぇっ大丈夫かよ」 舌打ちしながら不満を漏らした。
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