真実 *

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ちょうど心結の頭上から木洩れ日が降り注ぎ、心結の顔だけをスポットライトのように照らし出していた。 暗闇に浮かび上がる心結の顔が拓哉の目にとても神聖に映った。 ほんのりピンク色の頬、くるんとカールした長いまつ毛、愛くるしい瞳、肉厚のある下唇。 そのどれもが可愛くて、拓哉は思わず息をのんだ。 うっ、な、なんだこいつ・・・・。 マジで変な女! 心とは裏腹に、乱暴な言葉で感情を表現する拓哉。 しかし心結を見ているだけで、拓哉の動悸は激しさを増していった。 か、身体が動かない。 まさか俺、緊張してんのか? 惑わされそうな自分が怖くなり、すぐに裏庭から立ち去った拓哉。 あいつ確か・・・・、山野、山野心結だよな。 クラスは違うけど、俺と同じ2年だ。 ちぇっ、なんで山野がここに来るんだよ! 悪態をつきながらも、心の中に新しく芽生えた感情に、拓哉は逆らうことができずにいた。 一度芽生えた感情は、その後もすぐに消えることはなかった。 何なんだ、この気持ちは? ただの錯覚か? 拓哉は真相を確かめたくて、それ以降雨の日以外は毎日裏庭に足を運んだ。 心結が来るかどうかも分からなかったが、拓哉は心結を待ち続けた。 必ずまたここに来てくれると信じて───
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