真実 *

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そんな拓哉の想いが通じたのか、それから数日後、ようやく心結が裏庭にやって来た。 心結は拓哉に気づくことなく裏庭に入ってくると、前と同じ場所で芝生に膝を付き、ポケットから携帯電話を取り出した。 そして、何やらブツブツ独り言を言いながら、しきりに校舎の方に携帯電話を向けていた。 山野は何やってんだ? ひょっとして写真を撮ってんのか? 心結の奇怪な行動に、今や拓哉も興味津々、こっそり身を乗り出して見ていた。 山野ってただの変態女なのか? そんなの許されないだろ・・・。 様々な考えが頭に浮かぶ中、拓哉の顔には終始笑顔が溢れていた。 心結を一人だけ独占しているような優越感に満足していた。 その上、裏庭にコソコソやって来る心結の秘密を握ったようでもあり、気持ちは高まるばかり。 山野は俺がいることを知らない。 もし俺がここに隠れてると知ったら、あいつめちゃくちゃ驚くだろうな。 しかしそんな密かな拓哉の楽しみは、そう長くは続かなかった。
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