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数日後の昼休み。
拓哉はいつものように京一郎たちに誘われ音楽室に来ていた。
目の前では京一郎が楽しそうにギターを弾いている。
なのに拓哉は少しも楽しくはなかった。
もしかしたら今日も山野は裏庭に来ているかもしれない。
ひょっとしたら今頃、独り言を言いながら笑ってるかも?
つい心結の事ばかり考えてしまう拓哉は、のんびりギターを聞いている気分にはなれなかった。
今すぐでも裏庭に飛んでいきたい、そんな衝動に駆られていた。
二曲目の曲が終わったところで、拓哉は我慢できず思わず立ち上がってしまった。
けど、京一郎が意外なことを口にしたため拓哉はその場を離れることができなくなってしまった。
「なあ恵介。山野って最近可愛くない?」
山野?山野って山野心結のことか?
心結の名前が出た途端、ピタリと動きを止めた拓哉。
京一郎にパッと鋭い視線を移した。
「どうしたんだ拓哉?」
急に立ち上がったかと思えば、自分を睨みつける拓哉を、京一郎は不審に思った。
「いやー、ちょっとな」
すぐバレそうな言い訳をしながら拓哉は座り直し、今度は恵介を見た。
恵介はなんて答えるんだ?
心結の名前が出た以上、二人の会話が気になって仕方ない拓哉。
真剣な表情で、神経を研ぎ澄ましていた。
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