真実 *

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「あっ、先輩だ!」 突然拓哉の耳に、心結の可愛い声が飛び込んできた。 心結は嬉しそうに声を弾ませながら、携帯のボタンを押している。 先輩? 心結の位置からすると、先輩と呼べる男はただ一人。 ・・・・あいつか。 今にも飛び出しそうな気持ちをグッとのみこみ、拓哉はその男子生徒を睨みつけた。 あいつは確か3年の大崎、大崎秀人。 大崎先輩とは会話したことはなかったが、面識は十分過ぎるほどあった。 それもその筈、ちょっとした有名人である大崎先輩を知らない生徒は一人もいない。 生徒会役員を務め、成績は常にトップクラス、大崎先輩に憧れる生徒は後を絶たない。 そんな先輩は、大学も推薦合格間違いないと噂されていた。 へぇーーー、山野って大崎先輩を撮ってたのか。 へぇーーー、そうなんだ・・・。 今も目の前で心結が嬉しそうに大崎先輩を見つめていると思うと、拓哉は冷静ではいられなかった。 悔しさのあまり拓哉の顔はひどく歪んでいた。 そして目には嫉妬の炎がメラメラと燃えていた。
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