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どれくらい時間が経ったのだろう。
ふと気がつくと、先生たちの車がどんどん駐車場に入って来るのが見えた。
えーーーー!もうそんな時間なの?
心結が驚いていると、生徒用の玄関の扉が、ガタガタと音をたてて開き始めた。
「おっ早いな山野。おはよう」
英語の先生が扉の向こうから顔を出し、心結に声を掛けた。
「おはようございます」
心結は不愛想に挨拶しながら玄関の中に入ると、早速腰を屈め、再び懸命に探し始めた。
すると、そんな心結の様子を見た先生が、「山野、探し物か?」と、尋ねてきた。
「はい、大事なものを昨日なくしちゃって・・・」
心結は先生に顔を向けることなく答えた。
「そうか、早く見つかるといいな」
先生はそれだけ言うと、心結の前を通り過ぎ、別の扉を開け始めた。
心結は必死だった。
下を向くと、溜まっていた涙が零れ落ちた。
お願い出てきて!!
心結の悲痛な叫びは、いつになったらなくした携帯に届くのか。
締め付けられる思いに、心結は顔を歪めながら、それでも探すことを止めようとはしなかった。
そんな時だった───
「おいっ!」
突然心結の背後から、一人の男子生徒が声を掛けた。
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