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そんな時だった───
拓哉の目の前で、ある出来事が起こった。
それまで楽しそうに写真を撮っていた心結だったが、急に何かを思い出したように立ち上がった。
心結は立ち去る時に携帯をポケットに入れようとしたのだが、上手く入らずストンと下に落ちてしまった。
下が芝生のため音もなく、心結は気づかず行ってしまった。
咄嗟に声を掛けようとした拓哉だったが、ここにいるのを心結に知られるのが怖くて身を隠してしまった。
芝生の上には、心結の携帯がポツンと落ちていた。
拓哉は心結が立ち去ったのを確認すると、ゆっくりと近づき、心結の携帯を拾い上げた。
はぁ~、どうするこれ。
拓哉は携帯を見つめながらしばらく考えていた。
これは山野の携帯だ、すぐに返したほうがいいに決まってる。
そんなことは俺だって重々承知してる。
けど───
このまま返すだけなんて惜しい気がする。
これは俺に与えられたチャンスかもしれない!!
そう思った拓哉は、携帯の電源を切るとブレザーのポケットに入れた。
そして、何事も無かったように教室に戻って行った。
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