真実 *

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授業中、ずっと拓哉の神経はポケットに集中していた。 これは完全な犯罪だ。 けど、俺は山野には必ず返すつもりだ。 だから少しの間借りてるだけだ。 罪の意識に苛まれ、心が痛む中、そう何度も勝手な言い訳を繰り返す拓哉。 次の休憩時間になると、早速心結のクラスを覗きに行った。 心結はおろか、友達の姿もそこにはなかった。 きっと必死でケータイを探してるに違いない。 瞬時にそう悟った拓哉は、ポケットに手を突っ込むと心結の携帯電話を握りしめた。 少しだけ、少しの間だけ俺に貸してくれ! 頼む山野! 拓哉は祈る気持ちで携帯から手を離すと、一目散に廊下を駆け出して行った。
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