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そんな二人を横目で見ながら拓哉は思っていた。
いつもの俺だったらすぐに指定された場所に行っていたかもしれない。
けど、今の俺は山野のことで頭がいっぱいで、そんな余裕はまったくなかった。
今こうしている間でも、山野は携帯を探しているはずだ。
なのに、その原因を作った俺がこんなことしてて良いわけがない。
拓哉はかばんを持つと、
「じゃあ俺先に帰る」
と言って、すっと立ち上がった。
そんな拓哉を見た京一郎と恵介は、呆気にとられていた。
「ど、ど、どうしちゃたの拓哉?大丈夫?」
拓哉に熱があると思ったのか、恵介が拓哉の額に手を伸ばした。
すると、恵介の手をさっと払いのけ、
「俺は熱なんかない!」
と、眉間にシワを寄せながら拓哉は言った。
「けど、ずっと待ってるかもよ~。待ちぼうけなんて、可愛そうにな~」
京一郎がニヤニヤしながら、拓哉の心に揺さぶり掛けてきた。
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