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「分かったよ、行くよ、行けばいいんだろ」
二人はあまりに不機嫌な拓哉を見て、不審感を募らせていた。
「いつもの拓哉じゃないよな」
「ああ、確かにいつもの拓哉じゃない。こんな拓哉を見たのは初めてかも」
二人は顔を見合わせると、教室を去って行く拓哉に首を斜めに傾けた。
* * *
心結の携帯を持っているという後ろめたさもあったが、それ以上に早く帰ってこれからどうするかを、じっくり考えたい拓哉だった。
とにかく早く済ませて帰ろう!
そんな思いも手伝って、拓哉はサッカー部の横に急いだ。
「あっ、草壁先輩!」
拓哉がグラウンドに姿を現した途端、1年の女子が近づいて来た。
あれっ?さっきの女とは違うけど、こいつも1年か?
しかしそんなことは今の拓哉にはどうでもよかった。
「すみません、急に呼び出したりして」
1年の女子はモジモジ恥ずかしそうに上目遣いで話しかけた。
「で、話って何?」
一刻も早く帰りたい拓哉は、視線を合わそうともしない。
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