本物

4/22
前へ
/381ページ
次へ
屋上に向かう心結の足取りは重かった。 なんで急に呼び出されなくちゃいけないのよ? まだお弁当残ってたのに・・・。 心結は口をへの字に曲げ不満を漏らしながらようやく階段を昇り切り、目の前の重い鉄の扉を開けると、その先に拓哉の姿を見つけた。 拓哉は屋上の柵に寄りかかりながらグラウンドを見ていた。 心結はゆっくりと拓哉に近づくと、同じように柵に寄りかかった。 「どうしたの突然」 しかし拓哉は黙ったままグラウンドを見つめ笑っていた。 心結の問いかけには答えようとはしない。 なによ、呼び出しておいて無視する気? 心結は口を尖らせると柵の下を覗き込んだ。 グラウンドでは数人の生徒がキャッチボールをしていた。 しばらくその光景をぼんやりと眺めていたが、一人の生徒がボールを取り損ねたため、心結は思わず身を乗り出した。
/381ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2935人が本棚に入れています
本棚に追加