本物

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それと同時に、拓哉がゆっくりと心結の方に身体を向けた。 驚いて振り返った心結に、拓哉は真っ直ぐな視線を投げかけてきた。 少しの沈黙── 心結は瞬きするのも忘れ、目の前にある端整な拓哉の顔を見つめていた。 なに、なんなの? 心結の心拍数は急激な上昇を始める中、突然拓哉が沈黙を破った。 「心結、好きだ」 えっ? 一瞬時間が止まった気がした。 えーーーーーっ!! けど、すぐに時間は戻り、心結は口から心臓が飛び出しそうなほどの衝撃を喰らっていた。 思わず倒れそうになり、柵をギュッと掴んだ。 な、な、何を言い出すのかと思えば・・・・。 拓哉君急にどうしちゃったの?? 思いがけない拓哉の告白に、心結は柵を掴んだままゴクリと息をのんだ。 その間も拓哉は心結を見つめ続けていた。 どうして黙ってるの? 何か言ってよ!! 沈黙さえ恐ろしくて、拓哉に救いを求める心結。 けど拓哉は黙ったまま。 ますます焦った心結は、呼吸をするのも困難だった。
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