本物

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すると───  急に拓哉が大声で笑い始めた。 はぁ~? 放心状態のまま拓哉をじっと見つめる心結。 「おまえ、ほんとバカだな」 拓哉はお腹を抱えながら意地悪く言った。 「バカ?それってひどくない?何で私がバカ呼ばわりされなくちゃいけないのよ」 自尊心を傷つけられた心結は、拓哉に文句を言った。 「悪い、言いすぎたみたいだな。けど、これも小説のためだ」 拓哉の一言で、ようやく状況が飲み込めた心結。 だからと言って、怒りの炎はすぐには消えない。 ひどい!ひどすぎるよ!冗談じゃないわ、許せない!! 心結の顔には悔しさと腹立たしさが滲み出ていた。 そんな心結に追い打ちをかけるように、拓哉が尋ねた。 「どうだ?男に告られた気分は」 「ふざけないでよ!モテモテの拓哉君にはこんな気持ち分からないでしょうね!どうせ私はバカですよ!バカで悪かったわね!」 心結は今にも泣きそうな顔で、拓哉の横を通り過ぎようとした。 そんな心結の行動に焦った拓哉は、慌てて心結の前に立ち塞がった。
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