本物

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「怒ったのか?」 「当たり前でしょ」 「あーーー悪い。ちょっと言い過ぎた?」 拓哉の顔には、それほど悪びれた様子は見られない。 「何それっ、もう知らないっ!」 そんな拓哉にますます腹を立てた心結は、プイッとそっぽを向くと、拓哉の横を通り過ぎようとした。 がしかし、それを阻止しようとする拓哉の手が心結の腕をさっと掴み、それ以上進むことができなくなってしまった。 「そう怒るなよ。また一ついいが経験できたんだ、有難いって思えよ」 頭上から降り注ぐ拓哉のセリフに、心結はキュと唇を噛んだ。 拓哉君は告白とか慣れてるから平気かもしれないけど、私の身にもなってよ。 私なんて心臓がひっくり返りそうになったんだから。 不満に歪む心結の気持ちを察したのか、拓哉が心結の顔をジロリと睨みつけた。 えっ?うそ!拓哉君怒っちゃった? マズイよそれ。 心結は慌てて作り笑いを浮かべると、 「えへへっ、そうだよね」 と、拓哉に同意する姿勢を見せ、どうにかこの場を取り繕いたい心結。 そんな心結の様子に、フッと鼻で笑う拓哉。 心結はまた敗北感を味わっていた。
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