本物

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はぁ~、私って考えすぎなのかなぁ~。 心結はすっかり落ち込んでいた。 確か拓哉君には好きな人がいるんだよね。 そんな人が私に告白なんてする筈ないのに・・・・。 心結は以前拓哉が言ったセリフを思い出し、ため息を吐いた。 普通に考えればすぐに分かりそうなことなのにさ、騙されちゃうんだよね、拓哉君のあの顔に。 ふと隣に視線を移すと、キャッチボールをしている生徒を見ながら拓哉が笑っていた。 こんな顔で笑いながら言ってくれたらいいのに。 あんな本気モード出されちゃうと、こっちも本気にしちゃうよ。 まっすぐ突き刺さるような拓哉の視線を思い出し、心結の胸はキュンとなった。 とにかくこれからはバカにされないためにも、十分気をつけないとね。 心結は柵に寄りかかりながら、自分にそう言い聞かせていた。
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