本物

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「恋愛小説書き始めたんだな」 拓哉が不意に言った。 「うん!見てくれたんだね」 小説の内容が内容なだけに、拓哉を目の前にこの話題は少し恥ずかしい気がして、心結は顔を赤らめながら少しはにかんで見せた。 「で、どうだった?小説を読んだご感想は」 遠慮がちに尋ねる心結に、拓哉は─── 「まだまだだな」 期待していたものとは違い、拓哉の感想はかなり厳しいものだった。 ううっ、やっぱりそうなんだ。 拓哉君には面白くなかったのかぁ。 少し手ごたえを感じていただけに、拓哉の言葉にショックを受ける心結。 そんな心結の気持ちを察してか、拓哉の口調が急に優しくなった。 「そこでだ。小説をもっと良くするために、恋愛のレクチャーレベルをもっと上げようと思っている」 レクチャーレベルを上げる? 今でもいっぱいいっぱいなのに、これ以上何を上げるって言うの? 心結は目をパチパチさせながら拓哉を見た。
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