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しかし校門を抜けると、すぐに拓哉の手が伸びてきた。
手を繋げ!という暗黙のルール。
少し慣れてきたとはいえ、小心者の心結には、いつも拓哉の掌に冷たい指先をちょこんとのせるのが精一杯だった。
「今日はどっか寄って行くか?」
そんな心結の指に自分の指を絡めながら、拓哉は今までにないセリフで問いかけてきた。
「どこかって?」
拓哉からの初めてのお誘い。
戸惑う心結の胸のドキドキが、どんどん加速していく。
「例えば何か食いに行くとか?俺たちまだデートらしいデートをしたことないだろ。ここらでレベル上げていこうぜ」
「デ、デ、デート!!」
心結は思わず悲鳴に近い声を上げた。
「しーーーっ、声がデカい!デートくらいでなんだよ。心結はいちいち驚き過ぎだ!付き合ってる男と女なら普通デートくらいするだろ?」
「う、うん、そうだね」
拓哉に諭され心結は恥ずかしくて肩をすぼめた。
ホント、私ったら驚き過ぎよね。
けど、デートかぁ、今までちっとも気付かなかったわ。
フフッ、またいい話が書けそう!
執筆活動に燃えている心結は、正直嬉しかった。
恋愛小説を書くことは、最初はあまり乗る気でなかったが、素直に感じたままを書いていると、ついついページが増えていった。
実話というリアルさが読者にウケるのか、人気も上々。
心結は毎日パソコンの前に座るのが楽しくて仕方なかった。
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