本物

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「でも、そこの席空いてるよ」 前の席を指さす心結を、拓哉は睨みつけた。 「俺はここに座りたいんだ」 拓哉はそう言うと、心結の座っているわずかな隙間にグイグイと腰を押し入れてきた。 「わ、分かったから。ちょっと待って」 仕方なく心結はカバンを前の席に放り投げると、そのまま横にスライドした。 すると、待ってましたとばかりに、拓哉がドカッと腰を下ろした。 「なんで横並びに座るの?」 「そりゃーこっちの方が手を出しやすいだろ?」 拓哉のセリフにすぐに反応してしまう心結は、耳まで真っ赤になっていた。 「こんなこともすぐに出来るんだぜ」 そう言った途端、拓哉は心結の長い髪の毛をくるくると指で巻き取って見せた。 ひ、ひえぇぇぇ~!! いきなり過激なスキンシップを与えられ、心臓が爆発しそうな心結。 シートの奥に追いやられた以上、逃げることもできない。
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