本物

17/22
前へ
/381ページ
次へ
「これじゃーメモできないよ。小説の資料にするんだから邪魔しないで」 けれど拓哉は一向に手を緩めようとはしない。 「この前変なことしないって約束、もう忘れたの?」 「あの時はあの時。今とは違う。言っただろ?レベルを上げるって」 「で、でも・・・、さすがにこれはやり過ぎじゃない?」 困惑と恥ずかしさがミックスされ、心結の瞳はウルウル状態。 「ったく・・・」 拓哉は吐き捨てるように言うと、心結から手を離し、大きく息を吐きながらネクタイを緩めた。 「ほら、あいつら見て見ろ。自分らの他には誰もいないって感じだろ。二人の世界に入っちゃってんだろうな」 確かに拓哉の言う通り、二人が周りを気にしている様子はない。 彼氏は終始彼女の髪を優しく撫で、彼女はウットリした目で彼氏を見つめ返していた。 見ているだけで、こっちのハートがトロケちゃいそう。 心結は頬を赤く染めながら目のやり場に困っていた。
/381ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2935人が本棚に入れています
本棚に追加