本物

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「大丈夫か?」 緊迫する状況の中、拓哉が声を掛けた。 心結の緊張が拓哉にも伝わっているのか、拓哉の顔も少し強張っている。 「う、うん。でもさっきからドキドキが止まらないよ~」 心結は目が合わないよう視線を逸らすと、困惑した表情で答えた。 「はははっ。それって正常な証拠だ。俺だってドキドキしてる」 そう言うと拓哉は、心結の頭を自分の胸に押し当てた。 あっ、本当だ! 拓哉の言葉通り、心臓がかなりの速さで動いている。 いつも冷静な拓哉君には、動揺なんて少しも見られないのに・・・・。 意外な拓哉の一面を知った心結は、心音を聞きながら顔をニヤつかせていた。 なーんだ、ドキドキしてるの私だけじゃないんだ。 拓哉が自分と同じ感情を持っていることが分かったことで、心結は拓哉にグッと近づけたような、そんな親近感を抱いていた。 「もう平気よ!」 「へーそう?じゃあもう少しレベル上げるか?」 強がってみせる心結に、拓哉は更なる意地悪を仕掛けてきた。 「あーーー、やっぱこれ以上は無理」 拓哉の強気な態度に、心結は慌てて首を左右に振った。
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