本物

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テーブルに置かれたオレンジジュースはすでに空だったが、迷わず取ると、心結は氷を口いっぱいに頬張った。 これで少し頭を冷やさないと。 氷をガリガリと噛み砕く心結。 冷めたい感触が、心結にはすごく心地よかった。 「おかわりいるか?」 「いいよ、今度は自分で買って来る」 そう言って立ち上がろうとした心結の腕を拓哉が掴んだ。 「俺が行く。心結はここに座ってろ」 拓哉はそう言うと、すっと立ち上がり、カウンターに向かって歩き出した。 そんな拓哉の優しさに、心結はドキッとした。 何だろうこの感覚。 ふわふわと身体が宙に浮いているみたいに軽い。 熱でも出たかな? 頬の辺りがさっき以上に熱いよ。 慌てて残りの氷を全部頬張る心結。 それでも熱はなかなか冷めない。 今日の拓哉君って、本物の彼氏みたい。 さっきのセリフ、鳥肌たっちゃったよ! 感動に胸躍らせながら、心結は拓哉の背中に熱い視線を送った。
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