本気 *

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裏庭で大崎先輩を嬉しそうに見ていた心結に腹を立てた拓哉は、翌日の昼休み、心結を屋上に呼びつけた。 屋上に現れた心結の不満げな顔に、拓哉はますます苛立ちを募らせた。 俺だとそんなに嫌そうな顔をするのかよ! 大崎先輩とはえらい違いだな! 拓哉は奥歯を噛みしめながら柵に寄りかかり、グラウンドを見下ろした。 拓哉の頭の中は絶えず心結でいっぱいだった。 にもかかわらず、何も知らない心結の言動は、拓哉の心を逆なでてばかり。 業を煮やした拓哉は、心結の方に身体を向き変えると、真剣な眼差しで心結を見つめた。 「心結、好きだ」 なんの前触れもなく、突然心結に告白をした拓哉。 大崎先輩の存在に、焦りを感じたのかもしれない。 だからと言ってふざけた気持ちは1ミリもなかった。 それなのに、目の前の心結の驚いた形相があまりに尋常ではなくて、拓哉は笑うことを余儀なくされてしまった。 「おまえ、ほんとバカだな」 もちろんこんなセリフも拓哉は言うつもりはなかった。 ただ自分の素直な気持ちを伝えたいだけだった。
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