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あの時の光景が頭をよぎり、心結の心を焦らせる。
やっぱり私と拓哉君は・・・・。
心配になった心結は、廊下を歩きながら拓哉の顔をちらっと見た。
そこには、いつもと変わらないカッコいい拓哉の顔があった。
そのことに少し安心する心結。
「んっ?どうした」
心結の視線に気づいた拓哉が、見下ろしながら言った。
「ううん別に」
適当に誤魔化したつもりの心結だったが、その表情は暗い。
私たちがどうなるのかなんて、聞けるわけないよね。
だって本当に付き合ってる訳でもないのに。
いろいろ考えているうちに、心結たちは図書室に着いた。
「じゃあ私、本を返してくるね」
入るとすぐ別行動を始めた二人。
心結は借りていた本を返そうと、カウンターに向かった。
一方拓哉は本棚を眺めながら、面白そうな本を探していた。
本を返却し終えた心結が、本棚に行こうと向きを変えた、まさにその時だった。
「きゃっ!」
突然近づいて来た女子生徒に、思い切り突き飛ばされた心結。
そのはずみで尻モチをついてしまった。
相手の女子生徒は、心結の悲惨な姿を見下すように眺めていた。
「ごめんね・・・」
あまり見掛けない生徒は、どうやら1年のようだ。
謝る心結に対し、1年の女子は、「いえ」とだけ言うと、逃げるように足早に去って行った。
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