体験

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「どうした?」 騒ぎを聞きつけた拓哉が、本棚の間から飛び出して来た。 「へへへっ、転んじゃった」 不思議そうな顔をして、心結に手を差し出す拓哉。 納得がいかない様子で心結の顔を覗き込んだ。 「どうしてこんな所で転ぶんだよ?何があったんだ?」 確かにそこは転ぶには不自然な場所、拓哉が不思議がるのも無理はなかった。 「へへっ。ちょっと人にぶつかっだけ、私の不注意だよ。相手の子にも悪いことしちゃったな。多分1年生だったんじゃないかな、すぐに居なくなっちゃったけど」 「ったく、気を付けろ!相手もドジな先輩に驚いて逃げ出したんだろ」 「うん、そうだよね」 拓哉に同意した心結だったが、内心では違うことを考えていた。 あれは私の不注意なんかじゃない。 あの子がわざとぶつかって来たんだよ。 だって転んだ私を見て、あの子少し笑ってた。 それってどう考えても普通じゃないよね。 冷酷な視線を思い出し、身震いする心結。
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