2936人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうした?」
騒ぎを聞きつけた拓哉が、本棚の間から飛び出して来た。
「へへへっ、転んじゃった」
不思議そうな顔をして、心結に手を差し出す拓哉。
納得がいかない様子で心結の顔を覗き込んだ。
「どうしてこんな所で転ぶんだよ?何があったんだ?」
確かにそこは転ぶには不自然な場所、拓哉が不思議がるのも無理はなかった。
「へへっ。ちょっと人にぶつかっだけ、私の不注意だよ。相手の子にも悪いことしちゃったな。多分1年生だったんじゃないかな、すぐに居なくなっちゃったけど」
「ったく、気を付けろ!相手もドジな先輩に驚いて逃げ出したんだろ」
「うん、そうだよね」
拓哉に同意した心結だったが、内心では違うことを考えていた。
あれは私の不注意なんかじゃない。
あの子がわざとぶつかって来たんだよ。
だって転んだ私を見て、あの子少し笑ってた。
それってどう考えても普通じゃないよね。
冷酷な視線を思い出し、身震いする心結。
最初のコメントを投稿しよう!