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「ねえ、拓哉君はキスしたことあるんでしょ?キスだけじゃないんだよね、それ以上のことも・・・あるんだよね」
口ごもる心結の瞳が小刻みに揺れていた。
拓哉はからかうのも忘れ、心結の瞳をしばらく見つめていた。
「心結、急にどうしたんだ?京一郎の言ったことなら気にすることないぞ」
心結を気遣いながら、拓哉が優しく声を掛けた。
「ううん、そうじゃないの。ただ、いくら拓哉君が教えてくれるっていっても、そういうことは無理なんだろうなって思って」
「・・・・心結?」
「へへっ、なーーんてねっ!当たり前だよねそんなの。なんか変だね私。やっぱあの映画のせいかな?」
心結はそう言って笑い飛ばしながら、拓哉に背を向けた。
もう、私ったら何言ってんだろう!
これじゃあ拓哉君にキスしてほしいって言ってるみたいだよ。
顔は笑っていたが、内心は複雑な心結だった。
──キス──
経験のない心結にとっては、憧れでもあった。
でも本当は私、拓哉君とならキスしてもいいって思ったんだよね。
どうしてかな?
突如生まれた感情に戸惑う心結。
胸に手をあてると心臓がトクトクと音をたてている。
心が騒がしくて落ち着かない。
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