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ようやく自分の恋心に気づいた心結。
今の心境は意外と落ち着いているように見えたが──
私拓哉君を好きになっちゃったんだ・・・。
拓哉君を・・・・。
えっ!マジ!!
えーーーーーーっ!!
拓哉の背中からぱっと離れ、数歩後退る心結。
心臓がドクンドクンと大きく跳ね上がっている。
「どうした?」
振り向いた拓哉の顔がまともに見れない。
「・・・・み、心結、顔・・・」
拓哉はそう言ったきり、近づこうとした足を止めた。
「ごめん。別に俺怒ってる訳じゃないんだ。ごめん。ハグもしないよ」
拓哉は心結が泣くと思ったのか、咄嗟に優しく声を掛けた。
拓哉はしばらく戸惑ったように心結を見つめていたが、意を決したように大きく深呼吸をした。
「心結、俺──」
そう言いかけた拓哉の言葉を、心結は慌てて遮った。
「拓哉君は悪くないよ。だからもう謝らないで。小説読んでくれたなら分かってると思うけど、小説のネタにちょっと聞いただけなの。小説のネタだよネタ。全然気にしないで!」
やたら『ネタ』という言葉を連呼した心結。
逆に空々しい気もしたが、沈黙したままの拓哉の顔をちらっと見た。
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