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「はははっ、知ってるよそんなの!なにムキになってるんだ?」
そう言い返す拓哉は、いつもの拓哉だった。
片方の眉を少し吊り上げ、心結を悪戯っぽく見つめていた。
ふぅ~、危ない危ない。
けど、自分の気持ちに気づいてしまった心結は、冷静ではいられない。
拓哉が手を繋ごうと伸ばした手も、すぐに掴むことができないでいた。
「どうした?ほらっ」
拓哉が訝しげに心結の顔を覗きこんだ。
うっ、近いよ、近い!
思わず背中を大きくのけ反らせる心結。
そんな心結に拓哉はますます怪訝そうな視線をぶつけてきた。
「反抗的な態度は──」
その言葉の先は聞かなくても十分知ってる。
けど、今ハグなんかされちゃうと私・・・・。
ますます顔を赤くさせながら、心結は目をギュッと瞑り、素早く拓哉の手を掴んだ。
その様子に、目の前の拓哉が思いきり吹き出した。
そんな屈託のない拓哉の笑顔が、心結の目にとても眩しく映った。
次の瞬間、緊張の糸が切れたように、つられて笑い出す心結。
私拓哉君が好き。
拓哉君のこの笑顔が大好き!
自分の気持ちに正直に向き合いながら、いつまでも拓哉の傍で笑っていたいと心から願う心結だった。
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