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・・・・心結?
大崎先輩がいるせいで、心結の歩く速度が極端に遅くなった。
そのせいで、拓哉とは教室一つ分ほど離れてしまった。
ちぃっ!大崎先輩に、俺と一緒にいるところを見せたくないのか?
そんな憶測に、拓哉は小さく舌打ちしながら後ろを振り返った。
心結とは逆に拓哉の歩く速度は加速していき、心結よりも先に大崎先輩とすれ違った。
心結と偽のカップルになってから初めてのこと。
くそっ、今まで一度も会わなかったのに!
今ここで会ったのは偶然で、今まで会わなかったのが奇跡だったのか?
すれ違いざま、一瞬そんな思いが拓哉の脳裏に浮かんだ。
やり切れない思いを抱え、更に速度を上げ、拓哉が後ろを振り返る。
ちょうど心結と大崎先輩の距離が縮まり、先輩が心結に話しかけたところだった。
「久し振りだね」
「こ、こんにちは」
ほんの些細な挨拶だった。
けど、それに応える心結の声が、拓哉の耳を刺激して止まない。
俺がいるのに、他の男としゃべんなよ!
特にそいつはダメだ!
これ以上二人の会話を聞きたくない拓哉は、玄関まで猛ダッシュで向かった。
心結は今頃大崎先輩と楽しく会話を弾ませているのだろうか?
心結の気持ちを知らない拓哉ではなかったが、こうして現実を見てしまうと、やはり許すことができなかった。
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