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心結が玄関にやって来るまでの間、拓哉は心穏やかではいられなかった。
数分間の出来事が、とても長い時間に感じられ、思い出したくもない二人の光景が脳裏に蘇った。
と同時に、心結が恥ずかしそうに俯く顔がチラつき、拓哉の嫉妬心をさらに激しくかき立てた。
俺は思い上がっていただけだったのか?
心結は俺を好きになりかけてたんじゃないのか?
たいした自信ではないが、最近の心結は、心から笑ってくれると拓哉は感じていた。
キスの件もそうだ。
どう考えても心結の言動は不自然だった。
心結が言い訳をする度に、拓哉は心結が自分を好きだと言っている錯覚に陥っていた。
それなのに──
心結の気持ちはやはり大崎先輩に向けられていた。
あいつが姿を現しただけで、心結の心は一瞬であいつに奪われてしまった。
くそっ!
それでも拓哉は、目の前で起こった現実をすぐに認めることができなかった。
何故なら拓哉は、裏庭で初めて心結を好きになった以上に、心結を好きになっていた。
今さら諦めることができない拓哉は、ある行動を起こすことに──
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