2936人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁぁぁ」
激しい動悸に苦しみながら、拓哉は下駄箱に寄り掛かり大きなため息をついた。
「ごめん、待った~?」
ちょうどとその時、心結が駆け足で玄関に姿を現した。
余韻が残っているのか、心結の頬はほんのりとまだ赤い。
よほど大崎先輩との会話が楽しかったのだろうか。
そんな心結納に拓哉の胸がチクりと痛んだ。
大崎先輩が好きだと言うことを、俺が知っているなんて心結は知らない。
もちろん俺が心結を好きだと言うことも。
だから心結の平然とした態度が余計にワザとらしく感じられ、拓哉の癇に障った。
もし俺が諦めのイイ性格だったら、こんなに苦まなくて済んだのにな。
けど、あいにく俺は性格がひねくれている。
いばらの道を選ぶしかなさそうだな。
拓哉が鼻でフッと笑った。
と同時に、まるで吹っ切れたように拓哉の顔に笑みがこぼれた。
「行こうか」
拓哉の口から放たれる優しい響き。
それとは裏腹に、拓哉の頭を駆け回る悪戯な悪巧み。
心結、覚悟しとけよ!
嫉妬や怒りをねじ伏せながら、これから起こる出来事に大きく胸躍らせる拓哉だった。
最初のコメントを投稿しよう!