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「こんにちは。お邪魔しま~す」
玄関に心結の可愛い声が響いた。
「誰もいないって言っただろ。挨拶しても誰も出てこないぞ」
拓哉のセリフに、心結の顔が少し強張ったのを拓哉は見逃さなかった。
フフッ、今更後戻りはできないぞ。
そんな拓哉の思いとは逆に、心結はスタスタと拓哉の後をついて、リビングへとやって来た。
男の子の家に来たのが初めての心結。
緊張した面持ちで部屋を見回した後、かばんからいつものように携帯電話とメモ帳を取り出した。
へーさっそくメモか。
余裕だな。
けど、その余裕いつまでもつかな?
心結の行動を気にしながら、拓哉は一人キッチンに向かい、母親の作り置きしていた夕ご飯を、こっそり戸棚の中に隠した。
母親が今晩いないのは本当だったが、晩御飯を作らないといけないと言うのはウソだった。
今夜は父親も遅くなり、外食してくると言っていた。
今日は絶好のチャンスだ!
拓哉の中で何かが大きく弾けた。
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