2935人が本棚に入れています
本棚に追加
/381ページ
「はあはあはあ・・」
息を弾ませながら、心結は廊下を走っていた。
授業が終わり、生徒たちが帰宅する中、心結だけはその流れに逆走していた。
急いで裏庭に行かなきゃ!
やばいやばい、草壁君を怒らすとやばいよ!!
心結は焦りながら、必死で走っていた。
心結が遅くなった原因は、依理子たちに捉まっていたからだ。
「ねえ、どこに行くのよ?」
「えっ、図書室だよ。いつも行ってるじゃん!」
「せっかくケータイも見つかったんだし、遊びに行こうよ」
依理子たちはなかなか心結を離してはくれない。
ケータイが見つかったことは、屋上から教室に行くとすぐ依理子たちには報告していた。
今まで心配をかけ、一緒に探してくれた恩もある。
みんなと遊びに行きたいのは心結も同じ気持ちだった。
けど、裏庭で待つ拓哉の顔がちらついて、心結は心穏やかではいられなかった。
「まあ仕方ないよ。心結の本好きは今に始まったことじゃないんだし。それに図書室に入ったら、心結はなかなか出てこないでしょ。残念だけどまた今度だね」
美穂が心結をフォローしてくれた。
「ごめん!また今度!じゃあ私行くね」
「次は絶対だよ!」
依理子たちに手を振ると、心結は急いで教室を飛び出した。
ごめんね、みんな。
心結は何度も心の中で依理子たちに謝っていた。
最初のコメントを投稿しよう!