契約

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「はあはあはあ・・」 息を弾ませながら、心結は廊下を走っていた。 授業が終わり、生徒たちが帰宅する中、心結だけはその流れに逆走していた。 急いで裏庭に行かなきゃ! やばいやばい、草壁君を怒らすとやばいよ!! 心結は焦りながら、必死で走っていた。 心結が遅くなった原因は、依理子たちに捉まっていたからだ。 「ねえ、どこに行くのよ?」 「えっ、図書室だよ。いつも行ってるじゃん!」 「せっかくケータイも見つかったんだし、遊びに行こうよ」 依理子たちはなかなか心結を離してはくれない。 ケータイが見つかったことは、屋上から教室に行くとすぐ依理子たちには報告していた。 今まで心配をかけ、一緒に探してくれた恩もある。 みんなと遊びに行きたいのは心結も同じ気持ちだった。 けど、裏庭で待つ拓哉の顔がちらついて、心結は心穏やかではいられなかった。 「まあ仕方ないよ。心結の本好きは今に始まったことじゃないんだし。それに図書室に入ったら、心結はなかなか出てこないでしょ。残念だけどまた今度だね」 美穂が心結をフォローしてくれた。 「ごめん!また今度!じゃあ私行くね」 「次は絶対だよ!」 依理子たちに手を振ると、心結は急いで教室を飛び出した。 ごめんね、みんな。 心結は何度も心の中で依理子たちに謝っていた。
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