契約

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「だからだよ。だから俺が教えてやろうって言ってんだろ」 気落ちした心結に気遣っているのか、拓哉の声のトーンが優しく感じられた。 怒ってみたり優しくなったり、草壁君てホント不思議なヒト。 心結はこの時、拓哉に対してこんな感情を抱き始めていた。 男性をあまり知らない心結にとって拓哉の行動は予測不可能。 それをあえて『不思議』ととらえるあたり、やはり心結はまだ子供だった。 どうせ私は恋愛経験がないわよ。 それなのに、草壁君は私にここまで言ってくれている。 ケータイを拾ってくれたのは本当に運命だったのかも。 草壁君に教えてもらえるなら、恋愛小説だって書けそうな気がしてきた。 ここは辛抱してアドバイスを受ける方が得策かもね。 おまけに心結は楽天家で単純でもあった。 そんな心結の気持ちがちょっとずつ揺れ動き始めた。
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