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「ほらっ」
拓哉が心結の前に再び手を差し出した。
心結はゆっくりと上体を起こすと、拓哉の手を掴み立ち上がった。
そして、スカートについた芝生を手で払いのけると、拓哉の前に顔を向けた。
「えっとー、よ、よろしくお願いします」
心結は深々と頭を下げた。
「分かればいいよ。じゃあさっそく今から俺の命令に従ってもらう」
心結が同意したことで、拓哉はうれしそうに声を弾ませた。
「命令!?」
急に聞き慣れない言葉を使う拓哉に納得がいかず、不信感を抱く心結。
そんな心結の気持ちを読み取ったのか、拓哉は言った。
「そう命令!教える以上俺だって気持ちよく教えたいだろ。最初に言っとくけど、俺は気が短い。不快なことは大っ嫌いだ。ここまで言えば分かると思うけど、俺の命令に従えないならこの話はなかったことにしよう」
拓哉は言い終わると、さっさと後ろに向かって歩き出した。
「待って!」
心結は慌てて拓哉を呼び止めた。
まるで心結が止めるのを待っていたかのように、拓哉の足がピタリと止まった。
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