契約

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「分かった。草壁君の命令を聞くよ」 心結は観念したように言った。 背中を向けた拓哉の顔は、心結の位置からは見えなかった。 しかしこの時拓哉は、口元を二ンマリと曲げ、満足そうな笑みを浮かべていた。 「ったく、山野は素直じゃねぇーなぁ。だったら最初からそう言えよ」 拓哉は吐き捨てるように言うと、心結を振り返った。 この時の拓哉の顔は、少しもニヤケてはいなかった。 それどころか、「はぁ~」とため息をつき、渋々といった表情を浮かべ心結の前に戻って行く拓哉。 先程とは、打って変わって真逆の態度だ。 けど、そんな拓哉を目の前にした心結も黙ってはいなかった。 これ以上拓哉の言いなりにはなりたくない。 そんな思いが心結の中に強く芽生えていた。 「命令は聞くわ。けど、さっきみたいなのはナシにしてよね」 「さっきみたいなのって?」 拓哉は顔を斜めに傾けると、とぼけたように言った。
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