契約

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心結は自分がとても惨めだと思った。 草壁君は完全に私のことをバカにして楽しんでいる。 それなのに草壁君が天使に見えたなんて、私はどうかしてたんだわ。 心結の心はますます沈み、スカートをギュッと掴んだまま悔しさを滲ませていた。 それなのに─── 「ほらっ」 拓哉の声に心結は顔を上げると、拓哉の大きな掌が心結に向かって真っ直ぐ伸びていた。 おまけに拓哉の顔はとても優しくて、心結の心を大きく揺さぶった。 草壁君から手を差し出されるのはこれで何度目? 心結は拓哉の手など、できれば取りたくはなかった。 けどそんなことをしたら、また草壁君にハグされるに決まってるよね。 ハグされるくらいなら、手を握る方がよっぽどマシよ! そう考えた心結はそっと手を伸ばし、拓哉の手を掴んだ。 拓哉の手に触れた途端、今まで感じたことのない感情が心結の中に広がっていった。 男子の手って結構大きいんだな。 急速に心結の心の中に淡い思いが広がっていく。 「どう?俺の手を握った感想は?」 心結の心を見透かしたように拓哉が尋ねる。 「う、うん。草壁君の手って・・・大きいんだね」 心結は恥ずかしそうに小さな声で答えた。
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