偽彼

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「おはよう」 少しトーンダウンしていたが、教室で依理子たちを見つけると心結は明るく声を掛けた。 けれど依理子たちは誰一人挨拶を返してはくれなかった。 それどころか、心結が教室に入ったのを見つけた途端、慌てて心結に駆け寄って来た。 3人の表情は決して穏やかとは言えず、どちらかというと険しいものだった。 な、何よ、みんなして・・。 昨日一緒に遊びに行かなかったことを怒ってるの? 図書室に行かなかったことがバレちゃったのかなぁ? 嘘をついた後ろめたさから逃れたくて、心結は咄嗟にカバンで顔を隠した。 しかしカバンは依理子によってあっさりと取り上げられてしまった。 代わりにそこに現れたのは、ニヤニヤした依理子たちの顔だった。 「心結~~~。何か私たちに言うことあるよね?」 「そうそう。心結、早く話してよ!」 えっ、話? 依理子たちに意味深な視線を投げかけられても、心結には思い当たることは何もなかった。 なのに依理子たちは、何もしゃべろうとしない心結を問い詰めようと、ジリジリと詰め寄ってくる。 顔を強張らせながら依理子たちを見つめ返す心結。 まだ見ぬ恐怖に心結はひどく怯えていた。
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