偽彼

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「ちょっと心結?隠し通せるとでも思ってんの?ちゃんと説明してよ!」 声を張り上げる依理子。 片眉を吊り上げてはいるくせに、顔はなぜか笑っている。 本当に怒っている訳ではないみたい。 でも、私から何を聞き出そうと言うの? 今一状況が理解できない心結は、ずっと黙ったまま立ち尽くしていた。 すると── 「ちょっと~心結。ひょっとして照れてんの?無理もないよね。心結は高2まで何もなかったんだもん。まあ言い出しにくい気持ちも分かるけどさぁ~」 美穂が優しく心結を見つめた。 「だよね。ごめん心結。私たち心結を責めてる訳じゃないんだよ。その逆!嬉しいんだよ!」 美穂の言葉に大きく頷くと、依理子は嬉しそうに目を輝かせた。 責めているとか、嬉しいとか、みんなは何が言いたいんだろう? ホントにどうしちゃったの? 寝不足もあり、立っているのがやっとの心結は、とりあえずイスに座ることにした。 けど、依理子たちの質問はとどまることがなく、心結の頭を余計に混乱させるばかり。 心結は机の上で頬杖をつくと、ふぅ~と大きなため息を吐いた。
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