偽彼

5/26
前へ
/381ページ
次へ
そんな心結の肩を美穂がガシッと掴んだ。 それを合図に、依理子と桃香も心結にグーッと顔を近づけた。 周りをすっかり固められた心結は、ゴクリと息をのんだ。 これから一体何が始まるの? 心結の心に不安が広がっていく。 すると依理子がニヤニヤしながら言った。 「どうなったの草壁拓哉とは?」 心結は一瞬自分の耳を疑った。 なんで依理子たちが草壁君の事を知ってるの? 心結の中に衝撃が走った。 大きく目を見開いたまま、動揺が隠せない心結は、口ごもりながら依理子たちに尋ねた。 「く、く、草壁君って、ど、ど、どどうしてそれを!?」 「心結のことなら何でも知ってるわよ」 肩を掴んでいた美穂の目が怪しく光り、ポンポンと心結の肩を軽く叩いた。 「本当は私たちも学校に来て知ったの。昨日草壁君に告られたって」 「でもやったじゃん!草壁君って女子に人気あるでしょ。その草壁君に告られたんだよ。心結は幸せ者だよ!」 桃香は羨ましそうに笑った。 依理子たちはその後も、『草壁拓哉』の名前を口々に連呼した。
/381ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2935人が本棚に入れています
本棚に追加