偽彼

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「ここなら邪魔は入らないな」 拓哉に連れられ、心結は屋上に来ていた。 鉄の扉を開けた先に、確かに人影はまったく見えない。 「悪いな、突然呼び出して」 ようやく心結の手を離した拓哉が、柵の淵に座りながら言った。 そんな拓哉を無視して、心結は黙って俯いていた。 突然こんな所に連れて来て、草壁君はどうしようっていうの? 心結の頭はひどく混乱していた。 拓哉にどう返事をすればいいのか見当もつかない。 心結は顔を強張らせながら、扉の前で息を弾ませていた。 「とにかく座れよ」 言われるままに拓哉の隣に腰を下ろす心結。 寝不足だった心結の体力は、屋上に来たことでかなり消耗していた。 「ふぅ~」 心結は座ると同時に大きく息を吐いた。 「あのさぁ」 急に話しかけてきた拓哉。 が、心結の顔を見た途端、拓哉は言葉を失った。
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