偽彼

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「今日は山野に話があって呼んだんだ。けど、おまえ顔色悪すぎだぞ。大丈夫か?」 心結の顔色を心配そうにうかがいながら、拓哉は話し掛けてきた。 その声は心結を気遣っているのか、とても優しかった。 「う、うん。なんとか・・・」 心結は下を向いたままぎこちなく答えた。 動揺したせいで呼吸は乱れっぱなし。 なんとか落ち着こうと、何度も深呼吸を繰り返していた。 「山野も聞いただろ?昨日の裏庭でのことを誰かに見られてたって」 私が知っているくらいだもん、草壁君も知ってて当然だよね、と心結は思った。 「う、うん。今日学校に来るとすぐ、依理子たちから聞いたよ」 「俺もダチから聞いた。ったく!」 拓哉は悔しそうに拳で柵を叩きつけると、怒りをあらわにした。 「困るよ私・・・。どうしよう・・・」 か細い心結の声は、怯えたように震えていた。 心結は両手で顔を覆うと、膝の上にうつ伏せた。
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