偽彼

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心結はハッと息をのんだ。 拓哉の眼差しがあまりにも真っ直ぐで、少しの迷いも感じられなかった。 だから余計心結は冷静ではいられなかった。 心拍数が半端なく上昇し、顔は真っ赤、脳ミソが沸騰するんじゃないかと思うほど、体中が熱く火照りだした。 クラッ! えっ、もしかして失神!? 一瞬倒れそうにはなったものの、心結の身体はそんなに柔ではなかった。 咄嗟にコンクリートに手を付き、なんとか転倒を回避。 が、しかし拓哉も黙ってはいなかった。 「おい本当に・・」 「大丈夫だから!!」 拓哉の声を遮るように、心結はきっぱりと言った。 なによ!他人事みたいに! 草壁君が『好き』って真顔で言ったからこうなったんでしょ! 再び心結の頭に拓哉の言葉が蘇り、心がざわつき始めた。 『好き』という言葉を言ったこともなければ、言われたこともない心結。 拓哉の一言に、かなりの衝撃を与えられていた。
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