偽彼

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「ぷっ、ぶはははははっ!!」 拓哉の高笑いに、ハッと我に返った心結。 なぜ拓哉が笑っているのか、心結は不思議でならなかった。 「おまえ何マジになってんの?顔が真っ赤だぞ」 拓哉にからかわれ、慌てて心結は頬に手をあてた。 ひどいよ!誰のせいよ! ジロリと拓哉を睨みつける心結はかなり動揺していた。 「そんな怖い顔するなよ。教えてやってんだろ。告白された時の気持ちってやつを。俺が好きなのは、山野の小説!」 ひ、ひえ~~~~!しょ、小説かぁ~~~!! だよね、そ、そうだよ! 草壁君が私を好きな訳ないよ。 けど、マジびっくりした~! 真相が分かった心結は、ほっと胸を撫で下ろした。 が、こんな時に冗談を言う拓哉の無神経さに苛立ちを隠せないでいた。 「昨日も言ったけど、俺は山野の小説が好きだ。だからこれからもいい作品を書いてほしい。俺はその手助けをしたいんだ。どう、参考になった?」 「・・・・う、うん」 確かに─── 今までだったらこんな気持ち、感じたことなんてなかった。 だって私、一度も告られたことなかったし。 『好き』ってこんなにも深くて重みのある言葉だったね。 たとえ本気じゃなくても、胸の辺りがまだざわざわしてるよ。 心結は頬を赤く染めながら、そっと胸に手をあてた。
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