偽彼

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「俺がやりたいのはそれだけ。やましい気持ちなんてどこにもない。いい作品を作るために一所懸命なだけさ」 拓哉は照れ臭そうに笑った。 そうよね!草壁君は確か好きな人がいるって言ってた。 それなのに私もドジだな。 楽天家で単純な心結は、拓哉の言葉ですっかり気持ちが切り替わっていた。 おまけに─── 草壁君がここまで私を応援してくれてるんだもん、その分期待に応えなくちゃ! こんなことまで思い始めた心結の顔に、ようやく笑顔が戻った。 少し希望が見えてきた、そんな瞬間だった。 「よしっ、決まりだな!」 心結の笑顔に拓哉は軽く頷くと、すっと立ち上がった。 「そろそろHRが始まるぞ、急ごう!!」 拓哉は再び心結の手を掴むと、教室に向かって走り出した。
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