偽彼

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授業中、ぼんやりと黒板を見つめる心結の耳に、先生の声は届かない。 授業はまるでうわの空、心結は拓哉の事ばかり考えていた。 拓哉から『好き』と言われた光景が、何度も頭の中で蘇る。 その度に心結の胸はキューンと締め付けられる。 まるで本当に恋しているかのように。 そんな心結の背中を、後ろの席の依理子がツンツンと指で突いた。 先生を気にしながら後ろを振り向くと、依理子は小さな紙切れを心結にそっと手渡した。 『どこ行ってたの?あとでちゃんと話してよね』 紙にはそう書かれていた。 はぁぁぁ~。 心結は大きなため息を吐いた。 心結はギリギリで教室に戻って来たため、依理子たちには何も話していない。 何て言おう・・・。 紙を手でギュッと丸めると、心結は頭を抱え机に伏せった。 けどその反面、心結の心はワクワクしていた。 それが証拠に、伏せった心結の顔は嬉しそうに笑っていた。 依理子たちに嘘をつくのは心苦しいが、拓哉と同じ秘密を共有することは、楽しいことでもあった。 今までの心結の平凡な学校生活が大きく変わろうとしていた。 と同時に、心結の心にも少しずつ変化が見られ始めていた。
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