2935人が本棚に入れています
本棚に追加
授業中、ぼんやりと黒板を見つめる心結の耳に、先生の声は届かない。
授業はまるでうわの空、心結は拓哉の事ばかり考えていた。
拓哉から『好き』と言われた光景が、何度も頭の中で蘇る。
その度に心結の胸はキューンと締め付けられる。
まるで本当に恋しているかのように。
そんな心結の背中を、後ろの席の依理子がツンツンと指で突いた。
先生を気にしながら後ろを振り向くと、依理子は小さな紙切れを心結にそっと手渡した。
『どこ行ってたの?あとでちゃんと話してよね』
紙にはそう書かれていた。
はぁぁぁ~。
心結は大きなため息を吐いた。
心結はギリギリで教室に戻って来たため、依理子たちには何も話していない。
何て言おう・・・。
紙を手でギュッと丸めると、心結は頭を抱え机に伏せった。
けどその反面、心結の心はワクワクしていた。
それが証拠に、伏せった心結の顔は嬉しそうに笑っていた。
依理子たちに嘘をつくのは心苦しいが、拓哉と同じ秘密を共有することは、楽しいことでもあった。
今までの心結の平凡な学校生活が大きく変わろうとしていた。
と同時に、心結の心にも少しずつ変化が見られ始めていた。
最初のコメントを投稿しよう!