交際

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「ホントそそっかしいな」 拓哉が落ちた本を拾いながら言った。 心結はまだ自分の置かれている状況を把握できなかった。 「ほらっ」 拾った本を心結に手渡しながら、拓哉は笑っていた。 自分の目の前に拓哉がいる。 それが心結には不思議で仕方なかった。 「どうしてここに?」 「山野と一緒に帰ろうと思っておまえのクラスに行ったら、ここだって言われた。けど、おまえって本当に本が好きなんだな」 拓哉はゆっくりと図書室を見渡しながら言った。 依理子たちだ。 依理子たちが草壁君に話したんだ。 もうっ、余計なことを言わないでよ。 心結はキュッと唇を噛んだ。 「借りる本は見つかったのか?」 本を持ったまま動こうとしない心結に、拓哉は尋ねた。 「えっ、まだだけど」 心結は持っていた本を慌てて本棚に戻した。 「私ねぇ、図書室に来るといつも長いの。それで依理子たちにいつも文句言われちゃってね。だから草壁君も先に帰った方がいいよ」 心結はそう言い終わると、ちらっと拓哉を見た。
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